マグネシウムが体に必要なミネラルの1つであることは知っていても、なぜ必要なのか、実際にどのような働きをするのかはよく知らない、という人が多いのではないでしょうか。実はマグネシウムは、健康はもちろん、美肌づくりにも欠かせない栄養素。今回は、体にうれしい変化をもたらすマグネシウムのパワーについて、管理栄養士の望月 理恵子さんにうかがいました!

- Profile
- 望月 理恵子さん
- > 健康検定協会
管理栄養士・保育士・料理研究家。健康検定協会理事長。大学講師やクリニックの栄養顧問、日本臨床栄養協会評議員、サプリメント・ビタミンアドバイザーなど、栄養・美容学の分野で活躍。テレビや雑誌などのメディアにも栄養学に基づく情報提供や監修を行っている。近著に『やせる時間に食べてみた!』(主婦の友社)。
マグネシウムの
役割と効果
必須ミネラルのひとつであるマグネシウムは、補酵素として体内のさまざまな代謝を助け、筋肉や神経、心肺機能などが正常に働くために欠かせない栄養素。一見すると地味な存在ですが、生命活動を支える重要な役割を果たしています。

骨の柔軟性を保つ
カルシウムの吸収を助け、骨や歯を形成するとともに、柔軟性のあるしなやかな骨を作ります。骨密度を高める働きもあるため、女性に多いとされる骨粗しょう症の予防にも役立ちます。
筋肉の収縮を調整
体内のミネラルバランスを正常に保ち、カルシウムと共に筋肉の動きを調整しています。筋肉を収縮させる作用をもつカルシウムに対し、マグネシウムには筋肉を緩める作用があり、不足するとけいれん(こむら返り)を起こしやすくなります。
酸化ストレスを抑制する
マグネシウムは、細胞の老化を加速させ、しみやくすみの原因になる活性酸素を分解する作用が認められており、紫外線による酸化ストレスから肌を守ります。また皮膚の保湿力やバリア機能を高める作用もあり、美肌づくりをサポートする効果が期待できます。
PMS(月経前症候群)の緩和
マグネシウムの抗酸化作用や筋肉を緩める作用は、イライラや下腹部痛といったPMS症状の緩和に役立つとされています。「天然の精神安定剤」ともいわれるマグネシウムは、ストレスから体を守るためにも非常に重要なミネラルです。
便秘解消
マグネシウムには固くなった便に水分を引き込み、柔らかくして排便しやすくする作用があり、便秘の解消・改善に役立ちます。
睡眠の質が上がる
高ぶった交感神経を鎮める作用により、副交感神経が優位になって、心身をリラックスさせます。また、体内時計を整え、自然な眠りを誘うホルモン・メラトニンの生成を助ける働きもあり、睡眠の質向上にも寄与すると考えられています。
効果的な摂取のコツ
健康はもとより、アンチエイジングの観点からもきちんと摂取しておきたいマグネシウムですが、現代の日本人は不足傾向にあることがわかっています。日々の生活の中で無理なくマグネシウムを取り入れる、効果的な摂取のコツをご紹介します。

マグネシウムの推奨摂取量
1日のマグネシウム推奨量(※)は、成人男性で340〜380mg、成人女性で280〜290mg。成人女性の推奨摂取量を身近な食品で換算すると、絹ごし豆腐なら約2丁(300g/1丁)、バナナなら10本(可食部100g/1本)分。ただしマグネシウムは多くの食材に含まれているので、単一の食材に依存せず、バランスよく摂取することが重要です。
※厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
マグネシウムを多く含む食品
あおさやわかめなどの海藻類、エビ・カニなどの魚介類、玄米や雑穀類、ココアのほか、豆類や野菜にも多く含まれています。マグネシウムの摂取量を増やすなら、わかめと豆腐の味噌汁や玄米ごはん、魚料理といった、和食献立がおすすめです。
吸収率を上げるには
マグネシウムの体内吸収率は50%程度といわれていますが、ビタミンDと一緒に摂取すると、腸管での吸収率が増加することがわかっています。効果的に摂取するには、きのこ類や魚介類など、ビタミンDを含む食材を組み合わせるのがコツ。逆に、加工食品に含まれる多くの塩分やリンはマグネシウムの排出を促すため、できるだけ控えて。
ミネラルウォーターで補給
手軽に取り入れるなら、日中の水分補給をミネラルウォーターにするのもひとつの手。日本の土壌はそもそもミネラルが少なく、水も軟水がほとんどなので、マグネシウムやカルシウムが豊富に含まれているヨーロッパなどの硬水を選ぶとよいでしょう。
皮膚から取り入れる
マグネシウムは食事で摂り入れるほか、皮膚から吸収させる方法もあります(経皮吸収)。経皮吸収の効果について、日本ではまだ研究段階にありますが、研究が進んでいる欧米では、入浴剤(エプソムソルト)やマグネシウムスプレーが広く普及しています。日本でも販売されているので、リラックスアイテムとして取り入れてみては。
マグネシウムQ&A
「種類による違いは?」「摂りすぎるとどうなるの?」知っているようで知らない、マグネシウムにまつわる疑問を集めてみました。

なぜ不足しやすいの?
肉類や脂質の摂りすぎなど食の欧米化による栄養バランスの偏り、お米や塩など精製された食品の摂取、加工食品の摂りすぎなどが原因と考えられています。マグネシウム不足解消のために、多くのミネラルが含まれ、栄養バランスが優れた和食中心の食生活を心がけましょう。
サプリで摂ってもいいの?
OKです。ただし、必ず目安量を守ること。食事で摂るぶんには心配ありませんが、サプリメントでマグネシウムを過剰に摂取すると、吐き気や下痢などを引き起こすおそれがあります。
積極的に摂ったほうがいい人は?
塩分の摂りすぎは体内からマグネシウムが排出されやすくなるので、外食や加工食品を利用する機会が多い人は、意識的に摂取する必要があります。また肌荒れが気になる人、ストレスを感じやすい人も、積極的にマグネシウムを補給して。
いろいろ種類があるけど…
どう違うの?
マグネシウムは、例えば硫酸と結びつくと硫酸マグネシウムというように、特定の物質と化学的に結びつくことで存在します。
様々な種類がありますが、それぞれ吸収率が異なります。食品から摂取したマグネシウムの吸収率は40%前後で、その中でも塩化マグネシウムは約10%、酸化マグネシウムは4%と言われています。
サプリメントは形状や溶けやすさによっても変わりますが、酸化マグネシウムや硫酸マグネシウムよりも、以下は吸収率が高いとされています。
- ・アスパラギン酸マグネシウム
- ・クエン酸マグネシウム
- ・乳酸マグネシウム
- ・塩化マグネシウム
にがりを摂るのはOK?
「にがり」の別称は「粗製海水塩化マグネシウム」といい、海水から塩を取り除いた後の液体を指します。にがりをマグネシウム補給目的で適量摂ることに問題はありませんが、過剰摂取は下痢や高マグネシウム血症、高カルシウム血症などの電解質(ミネラル)異常につながりやすいので注意が必要です。
望月さんからのメッセージ
マグネシウムは金属のひとつであるため「体によくないもの」というイメージを持たれがちですが、私たちにとって不可欠な栄養素。長期的に不足するとストレスを抱え込みやすくなったり、不眠につながることもあります。3日に一度は食事内容を振り返り、摂れているかを確認するとよいでしょう。ナッツや玄米など、黒っぽい食材にはミネラルが豊富に含まれているので、意識して取り入れてみてくださいね。
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2025年 10月1日(水)~10月31日(金)まで
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