「寒いから…」と、閉め切った部屋の中で過ごすことが多い冬の季節は、つい換気をおろそかにしがち。しかし、おうちで過ごす時間が増えた今だからこそ、ウイルス対策や集中力アップ、美肌キープと、うれしいメリットがいっぱいの「換気」に気を遣いたいですよね。今回は、COLLINO一級建築士事務所のしかまのりこさんに、換気の重要性やルールを教えていただきました!
- Profile
- しかま のりこさん
- > COLLINO一級建築士事務所
COLLINO一級建築士事務所主宰。一級建築士、建築基準適合判定資格者など、建築に係る重要な資格を多数保有。設計・検査・審査した住戸数は5,000軒以上。また「~地球にやさしい 家族にやさしい~」をコンセプトに、300軒以上の居室の模様替えを行い、模様替えのスペシャリストとしてテレビ・雑誌でも活躍中。
冬の換気のメリット
【お部屋編】
目には見えないけれど、室内の空気中には無数のハウスダストや花粉、ウイルスに加えて、身の回りの生活用品から揮発する化学物質が含まれています。換気は、健康被害につながる可能性のあるこれらを取り除く唯一の方法です。
新鮮な空気に入れ替える
閉め切って二酸化炭素が充満した部屋に長くいると、倦怠感や頭痛、耳鳴り、息苦しさを覚えることも。換気すれば新鮮な空気を取り込むことができ、心身ともにリフレッシュできます。
ハウスダストやウイルスを外に出す
アレルギーや感染症を引き起こすハウスダストやウイルスは、掃除機をかけても微細な粒子が排気口から排出され、取り切れないおそれがあります。効率的に追い出すには換気がベスト。ペットがいるご家庭なら、臭い対策としても有効です。
結露を防ぐ
冬の悩みのタネである結露は主に窓や冷たい北側の壁に現れ、時に壁の内部でも発生して、建物に深刻な影響を及ぼすことがあります。加湿器を使用している場合は特に注意が必要。換気は結露を防ぎ、高温多湿の環境を好むカビやダニの繁殖を断つことができます。
有害な化学物質を除去する
カーテンやラグの防虫・防カビ加工、衣類の形状記憶加工など、私たちの身の回りの品の多くには、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを用いた化学加工が施されています。「〇〇加工」と表示された商品を使い始める時は、必ず換気を!空気中に溶けだした化学物質を吸い込んだり、肌に付着させてしまう前に取り除きましょう。
冬の換気のメリット
【キレイ編】
乾燥が気になる季節ではあるけれど、閉め切った部屋で過ごすのは美容面でも逆効果!健康と美しさを保つには、体に大きな影響を与える空気の質を高めることが重要なポイントです。
美肌を守る
浮遊するホコリや寝具についたダニの死骸やフンは、ニキビや吹き出物、皮膚炎の原因になります。キレイな空気の中であれば、汚れで毛穴を詰まらせることもなく、スキンケアの効果も高まります。また換気をせずに結露が発生すると、カビやダニが繁殖しやすくなります。ハウスダストによる肌トラブルを防ぐため、適度に換気を心がけましょう。
喉の乾燥を防ぐ
気管支はハウスダストや結露を介して繁殖するカビ・ダニなどに反応しやすく、声がれを引き起こす原因にもなり得ます。なめらかな発声のためにも、換気で汚れた空気を追い出し、のどのうるおいを守りましょう。美声は印象アップにもつながりますよ。
パフォーマンスアップ
新鮮な空気を取り入れて室内の二酸化炭素濃度が下がると、集中力が高まり、仕事や勉強の効率がアップすることが分かっています。室内でのエクササイズや家事の際に、換気でパフォーマンスを向上させましょう。
効果的な
換気のルール
シックハウス症候群を予防するため、2003年7月以降に着工された住宅には「24時間換気」の設置が建築基準法で義務付けられています。設置されている住宅では正しい使用を、設置されていない住宅では効果的な換気を行う必要があります。
「24時間換気」が
設置されている住宅
給気口を開けて常時オンにしておく
「24時間換気」のスイッチを常にオンにしておきましょう。およそ2時間で家中の空気が入れ替わります。ポイントは、室内の窓近くにある給気口を必ず開けておくこと。寒いからといって閉めっぱなしでいると、正しく換気されません。給気口のフィルターに花粉・PM2.5対応のものを使用するとさらに効果的です。目詰まり防止の交換や掃除もお忘れなく。
「24時間換気」が
設置されていない住宅
1日数回、5~10分を目安に
1時間ごとに5~10分が理想ですが、少なくとも午前・午後それぞれ2回ずつは行いましょう。1回の時間を長くするよりも、回数を増やすほうが効果的です。湿度の低い晴天の12~14時は絶好の換気チャンス。気持ち良く空気を入れ替えることができます。
2つの窓を開けて、空気の流れをつくる
対角線に近い位置の2つの窓を開けます。窓に高低差がある場合、空気は低い窓から高い窓へと抜けていきます。また、空気は小さな窓から大きな窓へと流れていくので、入り口としたい窓を狭く、出口を広く開けると流れをコントロールできます。入口は5cm程度開いていればOKです。
◎窓が1つしかない場合の対処法
開けた窓に向かって、2mほど手前から扇風機やサーキュレーターで風を送ると、室内の空気が外に押し出され、新鮮な空気に入れ替わります。
また、換気したい部屋の窓を開け、お風呂やトイレの換気扇を回せば、換気扇に向かって流れる空気の通り道ができます。ただし、開ける窓と換気扇はどちらも1つにしてください。複数だと流れが分散されてしまい、効果が薄れます。ドアと床との間にすき間(アンダーカット)があれば、ドアを閉めたままでも換気できます。
空気清浄機を活用する
ハウスダストやウイルス除去には空気清浄機も効果的です。加湿機能を搭載した製品もあるので、冬場は換気と合わせて活用してもよいでしょう。
しかまさんからの
メッセージ
空気は私たちに不可欠で、最も体内に取り込んでいるものです。そしてその空気は、ハウスダストや化学物質で、想像以上に汚染されています。
水や食べ物にこだわる人は多くても、空気にこだわる人はそういません。ですが、健康的で美しい毎日を送るためにはとても大切なこと。常に新鮮な空気の中で暮らせるよう、換気を徹底する生活を心がけてみてくださいね。