眠れないのは照明のせい?光をコントロールして体内リズムを整える

早く寝ようと思っているのになかなか寝付けず、朝起きられない、疲れが取れない…。それ、実は夜に浴びる「光」のせいかもしれません。光をいかにコントロールするかによって、健康にも美容にも大きく影響する体内リズム、さらには睡眠の質も変わってきます。今回は奈良県立医科大学の大林賢史先生に、光が人間に与える影響や、就寝時の調光のコツについてうかがいました。

大林 賢史先生
Profile
大林 賢史先生

奈良県立医科大学疫学・予防医学講座特任教授、医療法人啓成会グループCEO。東京女子医科大学循環器内科、奈良県立医科大学住居医学講座助教を経て同学疫学・予防医学講座准教授に着任、2020年から現職。主に光環境が生体リズムや健康に及ぼす影響に関する疫学研究に取り組んでいる。

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CHAPTER 1
肥満の原因にも?

光が人間に与える影響

人間は、太陽が昇って沈む自然界の光のサイクルに体内時計を合わせて進化してきました。ところが現代人は、夜も人工の光があふれる環境ですごしているために体内時計が乱れやすくなり、心身の健康にもさまざまな影響が及んでいると考えられます。

体内時計の調整

1日のリズムは、目から取り込んだ光の情報が、脳の視交叉上核という体内時計の中枢に伝わることでスタートします。夜になると、自然な眠りを促す睡眠ホルモン・メラトニンが分泌されますが、その分泌量や分泌されるタイミングも、光の浴び方で決まります。光は血圧や体温、代謝などにも関わっており、健康の土台を支える環境因子のひとつといえます。

ビタミンDの生成

太陽光(紫外線)を浴びると皮膚で合成されるビタミンDは、骨を強くし、免疫機能を調整するほか、心血管疾患を予防し、気分を安定させる働きがあることが報告されています。悪者扱いされがちな紫外線ですが、ビタミンDの生成には不可欠。日射しが強い時間帯は日やけ止めや帽子、日傘でガードし、朝や夕方に短時間浴びるとよいでしょう。

睡眠の質の低下

夜間の光はメラトニンの分泌を抑え、体内時計を乱す方向に働きます。特に短波長の光(ブルーライト)はメラトニン抑制作用が強く、寝る前のスマホやパソコンの使用、明るいLED照明は入眠を遅らせ、睡眠の質を低下させる要因になります。

肥満

奈良県の地域住民3000人以上を対象に行った大規模研究「平城京スタディ」によると、夜間、寝室で浴びる光が多い人ほど、肥満リスクが高まる傾向にあります。食欲を抑えるホルモン・レプチンが減少し、食欲を増進するホルモン・グレリンが増加して、糖をエネルギーに変えるインスリンの働きが低下するため、糖尿病の発症リスクも上昇することがわかっています。

うつ症状

夜間に浴びる過剰な光はメンタルにも悪影響を及ぼします。メラトニンの分泌が抑えられることで、睡眠障害を介してうつ症状の発症リスクが高まると考えられます。

CHAPTER 2
不調もリセット

体内リズムを整える
光の浴び方

大林先生のグループが実施した「平城京スタディ」では、多くの太陽光を浴びている人ほど夜間のメラトニン分泌量も多く、睡眠の質が高いことが示されています。十分なメラトニン分泌が期待できる光の目安は「1000ルクス以上を30分程度」。日中にしっかり光を浴びておくことで、乱れた体内リズムが整いやすくなります。

朝の光には体内時計を強力にリセットする働きがあり、起床後、できるだけ早く屋外の光を浴びるのが理想的。晴れの日の屋外は約10万ルクス、曇っていても1万ルクス前後の明るさがあるので、ベランダで軽くストレッチをしたり、散歩に出かけるのもよいでしょう。通勤時に数十分ほど屋外を歩くだけでも効果が期待できます。

オフィスビルなどの照明は明るく見えますが、おおむね300〜500ルクスほどで、日中のほとんどを屋内で過ごす場合、体内時計の調整に必要な光量には遠く及びません。屋内でも窓側は1000〜5000ルクスの明るさがあるので、窓の近くで過ごす、ランチは外で取る、短い散歩を入れるといった工夫が、夜のメラトニン分泌にも役立ちます。

白色や昼光色の明るい照明の光はメラトニン分泌を抑えるため、夜には適しません。室内の照明はオレンジ系の暖色光に調光し、メラトニンの分泌が始まる就寝の2時間前からはシーリングライトから間接照明に切り替えるなど、徐々に照明を暗くすると、望ましい光環境に近づきます。

CHAPTER 3
朝までぐっすり!

快眠に導く
調光テクニック

寝ている間は10ルクス程度のごくわずかな光であっても睡眠の質に影響し、肥満やうつ症状などのリスクが高まることが研究で明らかになっています。常に完全な暗闇の中で眠る、というのはなかなか難しいですが、寝室の環境を工夫し整えることで、良質な睡眠へとつながっていきます。

就寝中はできる限り暗く

視界に光源があると曝露(ばくろ・光にさらされること)量が増えてしまうため、寝室は薄暗いオレンジ系の間接照明のみにするとよいでしょう。就寝時にはすべての照明を消し、月明かり(1ルクス)程度の明るさで眠りにつくのが理想的です。

遮光カーテンを取り入れる

街灯などで寝室の外が明るい場合は、光が入らないよう遮光カーテンで防ぐことも大切です。また、カーテンの隙間から朝日が射し、その光で目覚めるのは一見健康的ですが、夜型の生活を送っている人だと睡眠が妨げられ、十分な休息時間を確保できないおそれがあります。東側に寝室と窓がある間取りなら遮光カーテンを取り入れ、起きた後に朝日を浴びるようにしましょう。

▼あわせて読みたい記事

寝室にスマホを持ち込まない

寝転んだ状態でスマートフォンを見ると、画面との距離が近すぎるために大量のブルーライトを浴びることになり、睡眠障害につながります。スマホやタブレットは寝室に持ち込まないよう習慣づけましょう。どうしても難しい場合は、画面の色をナイトモード(暖色フィルター)に切り替え、明るさを最低限にする工夫が必要です。

足元灯や人感センサーライトを活用

真っ暗だと眠れない、という人は、光源が低い位置にあり、目に入る光の量が少ない足元灯を利用するとよいでしょう。また、人の動きを感知して自動で点灯する人感センサーライトは、夜中トイレに起きたときの転倒防止に役立ちます

アイマスクで光をシャットアウト

寝室の環境を変えるのが難しいのであれば、アイマスクを利用するのも有効な手です。物理的に視界をさえぎることによって、浴びる光の量はほぼゼロになります。

大林先生からのメッセージ

大林 賢史先生光は空気や水と同じように、私たちの健康を支える環境因子のひとつです。ただ空気や水と違い、光の質や量は自分で調整できます。朝、少し早く起きて外の光を浴びる。日中は明るい場所ですごす。夜は、ほんの少し照明を落として、ゆっくりとした時間をつくる。それだけで体内時計は整い、睡眠も気分も安定していきます。完璧でなくても構いません。できる日に、できることから。光との付き合い方を少し変えるだけで、毎日の体調はきっと変わっていきます。

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