冬はなんだか憂鬱に…これって“ウインター・ブルー”?

頬を切る冷たい空気や早い夕暮れが、なんだか物悲しい気分にさせる季節。ただ、そんな気分や、やる気が起こらない状態がずっと続いていたとしたら「ウインター・ブルー」かもしれません。今回は、冬に起こる心と体のゆらぎの理由とその対処法について、精神科医の坂本里江子先生にうかがいました。

岩崎 朱見先生
Profile
坂本 里江子先生

青山すみれクリニック院長。精神科医・医学博士。地域の保健所や企業の産業医としての豊富な経験を礎に同クリニックを開業、女性特有の不調や悩みに寄り添う診療を実践。またアロマセラピストの資格を持ち、併設のアロマサロンの監修も担当している。

CHAPTER 1
見逃さないで!

ウインター・ブルーの
特徴

ウインター・ブルーは季節性の感情障害とも言われ、秋から冬にかけて多く見られる症状です。一般的なうつ病とは異なる特徴もあるので、今の心身の状態に当てはまるかどうかセルフチェックで確認してみましょう。

【ウインター・ブルー】
チェックシート

  • 訳もなく気分が落ち込む
  • やる気が起きない
  • 人と会うのがおっくう
  • ダラダラ長く寝るようになった
  • 寝ても疲れが取れず、日中も眠気が続く
  • 甘いものを食べ過ぎてしまう
  • ここ2〜3カ月で体重が増加した

※3つ以上当てはまる、もしくは3つ以下でも以前と変化の割合が大きい項目があればウインター・ブルーの可能性あり

ウインター・ブルーの特徴

秋から冬に症状が出る

昼夜の長さが同じになる秋分の日以降に症状が現れることが多く、春になると回復します。反復性があり、一度症状が出ると毎年同じ時期に繰り返します。

過眠・過食

気分の落ち込みや活動量の低下など、一般的なうつとの共通点もありますが、睡眠と食欲が過剰に傾くのがウインター・ブルーの大きな特徴。甘いものや炭水化物を摂りすぎていたり、ダラダラと寝続けてしまう日々が続いていたら注意が必要です。寝る時間が長くても眠り自体は浅いため「寝ても寝ても眠い」状態に。

ウインター・ブルーに
なりやすい人っている?

10〜40代の女性

毎月の生理や出産で変動する女性ホルモン、働き方や社会的な役割の変化など、起伏の多い年代の女性はそもそもストレスを感じやすく、心身の不調も引き起こしがち。また、貧血の症状として現れるだるさや眠気から、ウインター・ブルーに転じることも。

冬が苦手な人

四季の変化を楽しめるのは日本ならではの魅力ですが「寒くて辛い」「薄暗い感じが嫌」と冬に苦手意識を持つ人も少なからず存在します。そうした心理が影響して変調をきたすケースも見受けられます。

変化に敏感な人

気温や湿度が急激に変わる季節の変わり目は、その変化に体がついていけず体調を崩したり肌荒れを起こすことが多いもの。同様に、その変化にうまくメンタルが適応できない人も一定数存在し、不調が生じると考えられます。

CHAPTER 2
なにが関係?

ウインター・ブルーの
原因

ウインター・ブルーのメカニズムははっきりと解明されていませんが、日照時間の長さが関係していると見られています。日光を浴びる、または浴びないことで、体にどのような影響があるのでしょうか。

日照時間の減少

精神を安定させる働きを持つセロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、日光を浴びることで分泌が活性化されます。秋冬は日照時間が短く、他の季節よりもセロトニンの分泌量が低下するため、気分の落ち込みや意欲低下が起こると考えられます。

体内時計の調節エラー

セロトニンと相関関係にあるのが、体内時計を調整するホルモン・メラトニン。ウインター・ブルーによる過眠は、セロトニンの分泌が減ることでメラトニンの分泌量やタイミングが変わり、体内時計が狂うためとも見られています。

高緯度地域に住んでいる

世界的に見ると、日照時間の短い東欧諸国などの高緯度地域で発症例が多いことが確認されており、日本国内においても緯度が高く、山間部などあまり日が差さない地域の人に多いと言われています。

CHAPTER 3
深刻化させない!

不調改善メソッド

「忙しい」「仕方ない」と後回しにしてつらい症状を長引かせる前に、今日からちょっとだけ生活を変えてみませんか?特別なことは一切ナシ。無理のない「プラス1」のアクションを、日々のルーティンに組み込んでみて。

朝日を浴びる

朝起きたらすぐにカーテンを開けて太陽の光を浴びましょう。乱れた体内時計をリセットするのにも有効です。朝の通勤時に日の当たる道を少し長く歩いてみるだけでもよいでしょう。

外出予定を午前中に組み込む

日光を浴び、生活リズムを整えるためにも、銀行や郵便局、買い物などの外出予定はできるだけ午前中に済ませて。また、軽い運動がセロトニンの分泌を促すという研究結果も報告されていることから、移動の際はエスカレーターではなく階段を使うなど、無理のない範囲で体を動かすと◎。

食事は「おかず」を中心に

食事が糖類と炭水化物にかたよると、必要な栄養素が不足しがちになるので、おかずを充実させるよう心がけて。肉や魚、野菜、豆類を中心に摂りましょう。特に牛・豚・鶏レバー、大豆、チーズ、ナッツ類は、セロトニンの材料となるトリプトファンが豊富に含まれており、積極的に摂りたい食材。朝食の菓子パンを納豆ごはんにしたり、おやつのチョコレートをナッツに置き換えるなど、できるところから見直してみましょう。

ゆっくり湯船につかる

体の冷えが気になる冬は、湯船につかって芯まで温まることも大切。深部体温が上がると免疫が活性化し、自律神経も整います。

芳香浴を取り入れる

「午前中はぼんやりしてやる気が起こらない」という場合は、アロマの力を借りるのも効果的。覚醒を促し、気分をリフレッシュできるローズマリーやユーカリの精油を数滴ティッシュに垂らして嗅いでみて。長く嗅ぎ続けると鼻の臭細胞(しゅうさいぼう)が鈍るため、短い時間でOKです。

坂本先生からのメッセージ

坂本 里江子先生皆さんの中には、家族の世話を優先したり、仕事で責任のあるポジションを任されたりして、自分のケアを後回しにされている方が少なくないのではないでしょうか。いつも頑張っている皆さんに必要なのは、頑張りすぎず、無理なく続けられる一歩を選択すること。ウインター・ブルーの改善法は数あれど、自分に合うものを一つ見つけることから始めてみてください。

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