十分な量の食事を摂っているのに、高カロリーなスイーツや深夜のラーメンが我慢できず、自己嫌悪におちいった経験は誰にもあるはず。食べ過ぎやドカ食いを防いで太りにくい体をキープするには、食欲のしくみを理解することがとても大切です。今回は循環器内科専門医の藤井崇博先生に、食欲と関わりの深いホルモンの働きや、食欲を上手にコントロールする方法をうかがいました!

- Profile
- 藤井崇博先生
- > ディオクリニック
- > ドクター藤井のからだ想い弁当
医学博士、循環器内科専門医、ディオクリニック統括院長。循環器診療を通じて、病気の発生を未然に防ぐ一次予防の重要性を痛感。予防医学を軸とした医療体制を構築し、対面診療に加えメディアでの情報発信、医療現場の視点を反映した「ドクター藤井のからだ想い弁当」監修など、多方面から健康をサポートしている。著書に『30万人が結果を出した! 肥満外来医が教えるやせたいあなたが最後に読む本』(ダイヤモンド社)。
食べ過ぎてしまう原因
食べ過ぎやドカ食い、お腹が空いていないのに甘いものに手が伸びる……こうした行動は、意思の弱さや自己管理の甘さが原因だと考えがちですが、多くの場合、生活習慣や食環境が深く関わっています。

睡眠不足
寝不足や睡眠の質の低下は、満腹感をもたらすホルモン〈レプチン〉の分泌を減らし、空腹感を促す作用をもつホルモン〈グレリン〉の分泌を増やします。睡眠不足が食欲に与える影響は非常に大きく、ダラダラと食べ続けてしまう原因に。
ストレス
精神的なストレスや肉体的な疲れがたまると、ストレスホルモンと呼ばれる〈コルチゾール〉の分泌が増え、糖質や脂質が多い食べ物への欲求が高まります。イライラしているときにヤケ食いしたり、疲れているときに甘いものが欲しくなるのはこのせい。こうした食べ物は、快楽をつかさどるドーパミンの放出を促すため「もっと食べたい」欲求や衝動が起こりやすくなります。
満腹感を得づらい食環境
超加工食品(多くの成分からなる工業的に生産された食品で、加工度の高い食品)、ジュースや甘いカフェラテのような高カロリーな液体は、短時間で飲食が終わってしまうために満腹感が得られにくく、結果的にトータル摂取カロリーが増えてしまいます。また、テレビを見ながら、スマホをいじりながらの「ながら食べ」も、食事への集中力が低下して早食いや食べ過ぎにつながります。
食事間隔が長い
朝食を抜くなど食事間隔が空きすぎた状態で食事を摂ると、血糖の乱高下が起こり、食後の空腹感や強い眠気を招きます。これを繰り返すことによって血管がダメージを受け、動脈硬化のリスクも高まるため、欠食せずに朝・昼・晩の3食をきちんと摂りましょう。
体内時計のズレ
夜遅い食事や夜ふかしは体内時計を狂わせ、食欲のコントロールもしづらくなります。体内時計を調整する時計遺伝子〈BMAL1(ビーマルワン)〉には脂肪を蓄積する働きがあり、夜22時から深夜2時にかけてもっとも活性化するため、この時間帯の食事は太りやすくなります。
「食欲」に関わる
ホルモン
食べ過ぎてしまう原因からもわかる通り、食欲にはホルモンが密接に関わっています。ここでは、特に関係が深い「食欲ホルモン」とも呼ばれるホルモンの働きについてご紹介します。

レプチン
脂肪細胞から分泌される食欲を抑制するホルモン。体脂肪が増えると分泌量が増えて食べ過ぎを防ぐが、肥満の状態にあると、レプチン本来の働きが機能しづらくなり(レプチン抵抗性)、満腹なのに食べ過ぎてしまう悪循環に。
グレリン
胃から分泌され、脳に空腹のシグナルを伝えるホルモン。食欲を増進させる作用をもつ。
GLP-1・PYY(ペプチドYY)・
コレシストキニン
食事開始後に腸から分泌される3つのホルモン。血糖コントロール作用や消化促進作用、食欲を抑制する作用をもち、GLP-1は糖尿病治療薬にも用いられている。
インスリン
すい臓から分泌され、血糖を下げる作用をもつ。白米・食パンのような精製された炭水化物は血糖を急激に上昇させるため、インスリンが大量に分泌されるが、インスリンには余った糖分を脂肪に換えて体内に蓄積する働きがあり、分泌量が多いほど中性脂肪がつきやすくなる。
コルチゾール
副腎皮質から分泌され、ストレスや睡眠不足で分泌量が増える。分泌量が過剰になると代謝が低下し、食欲が増して過食や太る要因になる。
なぜ食欲ホルモンの
バランスが崩れるの?
不規則な生活やストレス、睡眠不足、加工食品中心の食事など、多忙な現代人の環境そのものがホルモンバランスの乱れにつながっているともいえます。また、体に強いストレスがかかる過度なダイエット、加齢によるホルモン変動、病気や服薬の影響で、食欲を抑えづらくなることがあります。
食欲を
コントロールする方法
食欲をコントロールするには、良質な睡眠と食環境を整えることがとても大切。特に食事は「何を食べるか」「どう食べるか」によって、ホルモンの働きが大きく変わってきます。

食事の「型」をつくる
腸から分泌される「食欲抑制ホルモン」を活性化しやすくするために、以下の3点を踏まえ、基本となる食事の「型」をつくりましょう。
①質のよいたんぱく質を毎食取り入れる
鶏肉や魚、大豆、ヨーグルトなどを摂ることによって、食欲を抑えるペプチドYY(PYY)の働きがよくなります。1日の摂取量の目安は、体重(※kgをgに置き換える)×1.5。例えば体重50kgなら、75gのたんぱく質を3食に分けて摂りましょう。
②食物繊維を増やす
玄米や雑穀米などの精製されていない炭水化物、全粒粉を多く含むパン、野菜、海藻、きのこ類などをプラス。食後の血糖の急上昇を抑え、満腹感が持続しやすくなります。
③温かい汁物で食事の立ち上がりをつくる
味噌汁や野菜スープなどを先に胃に入れることで満足感が得られ、早食い・ドカ食いが防止できます。
食べる順番とスピードを意識する
炭水化物を先に食べると血糖が急激に上がりやすくなるので、温かい汁物や野菜類→たんぱく質→炭水化物の順番で食べます。
また、少なくとも一口につき30回ほど噛み、時間をかけて食べること。特に食べ始めの5分間は「一口ごとに箸を置く」「普段より長く噛む」工夫を取り入れながら、“ゆっくり”を心がけましょう。咀嚼(そしゃく)によって神経伝達物質のヒスタミンが活性化し、満腹中枢が刺激されます。
おやつで夜のドカ食いを防止
朝・昼の食事量が少なすぎると、夕方以降に空腹感が強まり、夜の過食につながりやすくなります。そこで効果的なのが「3時のおやつ」。15時前後は、脂肪を蓄積する〈BMAL1(ビーマルワン)〉の働きが1日の中でもっとも低く、小腹を満たすには最適な時間帯。適度な間食で調整するとよいでしょう。
こんなときはどうしたらいい?
朝は忙しく、バランスの取れた食事を摂る
余裕がない…
本来は納豆や卵、魚、玄米などの伝統的な和食が理想ですが、時間がない場合は「無糖ヨーグルトとナッツ」「ゆで卵とコーヒー」、もしくは「味噌汁1杯」でもOK。朝は栄養補給というより、1日の代謝を促すホルモンのスイッチとして、たんぱく質+αの摂取を心がけましょう。
どうしても食べたい衝動がおさまらない!
衝動的な脳の欲求は「小さな間食」で落ち着かせましょう。大切なのは量よりも刺激を減らすこと。食欲の暴走を加速させる食べ物(辛い/甘い/脂っこい)は避け、無糖ヨーグルトやゆで卵、チーズ、ナッツなどを選びます。このときすぐ食べてしまうのではなく、小さく切ってお皿に出す、お茶を入れて飲むといったひと手間をはさむとより効果的です。
藤井先生からのメッセージ
「食べ過ぎ」の原因は意思の弱さではなく、いくつかの条件が重なることで誰にでも起こり得ます。今回、いくつかの対策を紹介しましたが、最初から完璧を目指すのではなく、実践できそうなものから始めてみてください。習慣化できたらもうひとつ、というように、少しずつ増やしていくとよいと思います。体は数日で変わるものではなく、小さな工夫の積み重ねで変わっていくもの。それが、将来の自分を助けることにもつながっていきます。
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2026年 4月2日(木)~4月30日(木)まで
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