おいしさがグンとアップ!“干し野菜”のちから

今、ひそかなブームを呼んでいる「干し野菜」をご存知ですか?野菜をよりヘルシーに、さらにおいしくしてくれて、とってもエコなアイデアでもある干し野菜は、自宅の庭やベランダなどで気軽に作ることができます。今回は、干し野菜の専門家である廣田有希さんをお迎えして、干し野菜の作り方やそのレシピを教えていただきました。いろんな野菜で試したくなるおいしい干し野菜、あなたもチャレンジしてみませんか?

干し野菜の専門家、フードコーディネーター、料理道具屋三代目。上智大学卒業後、フードコーディネーターとして活躍。テイクアウト専門のコンサルタントとして商業施設の店舗開発や商品開発を行う。2008年、実家の経営する会社に入社。新規事業で小売店舗「つきじ常陸屋」を手がける。2011年にはアメリカ・ロサンゼルス店をプロデュース。東京とLAを行き来しながら、干し野菜研究家として講師や著書を出版する。12月に浅草「まるごとにっぽん」に出店予定。

CHAPTER 1
魅力いっぱい!

干し野菜のメリット

野菜は新鮮なまま食べるのが一番!と思いこんでいませんか?もちろん、採れたての野菜もおいしいですが、干し野菜にするとまた違った味わいが楽しめます。味だけでなく、エコや栄養面でもいいことづくしの干し野菜のメリットをお伝えします。

旨み、甘味が増す!

干し野菜の特長は、素材の食感が楽しめることと、野菜の味が凝縮されて甘みが増すこと。青臭さやエグミも少なくなり、噛めば噛むほど野菜の旨みが広がって、干しただけとは思えない甘さが感じられます。濃厚でジューシーな味わいを楽しみましょう。

時短調理や長期保存に便利!

野菜の水分が少ないから火の通りが早く、調理時間が短くなります。干すことで旨みが増すため、調味料も最小限でおいしい料理が完成。また、カラカラに乾燥させた場合には乾燥材を入れた瓶などで常温保存、袋に入れて冷凍保存など長期の保存も可能です。半生の場合は保存袋や容器に入れ、3日から5日間程度冷蔵保存できますが、干したてがベスト。
※保存期間は目安です。

元気になる!

太陽の光を浴びた干し野菜は、太陽のちからがたっぷり詰まっています。干し野菜は、そのパワーと野菜の栄養を一緒にいただくことができるので、心も体も元気に!

廣田さんからの
ワンポイントアドバイス

「干し野菜って面倒くさそう」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、干し野菜こそずぼらな人や忙しい人の味方です。野菜を切って干してから仕事に出かけ、家に帰ってきたら取りこんですぐに調理ができます。疲れている時こそ、洗ったり切ったりせず、すぐに料理ができるので助かりますよ!

CHAPTER 2
この野菜、OK?NG?

干し野菜に適した
野菜の選び方

干し野菜の魅力を知ったら、さっそく野菜を干してみたくなったのでは?「でも、どんな野菜を干したらいいのか分からない…」と不安になる必要はまったくありません。ほぼどんな野菜でも干し野菜にできるんです!まずは気軽にチャレンジしてみましょう。

ほぼどんな野菜も干し野菜に○

根菜類・きのこ類・水分の多い野菜

ほとんどの野菜をおいしくしてくれる干し野菜。旬の野菜が一番おいしくできるので、冬は白菜や小松菜、長いもなどがオススメです。トマトなど水分の多い野菜は、種と水気をしっかり取って干すと失敗しづらいです。

細い野菜や傷みやすい野菜は×

スプラウト・三つ葉・冷蔵庫の余った野菜

スプラウトや三つ葉など細いものは不向きです。また、冷蔵庫に余っている古くなった野菜も×。おいしく干すなら新鮮な野菜が一番です。特に青菜類は旬の時期に干してくださいね。

廣田さんからの
ワンポイントアドバイス

干し野菜の代表的な野菜である根菜類は、干すことでクセや青臭さがなくなり甘みが増します。また、葉野菜やキュウリなどの果菜を干すと余計な水分が抜けるので、シャキシャキとした食感や澄んだ旨みが楽しめますよ。

CHAPTER 3
さっそくトライ!

干し野菜の作り方

野菜を切って、数時間から1日干すだけ。それを収穫してサッと料理します。それだけでおいしさがグッとアップします。まずは楽しみながら野菜を干すところから始めてみましょう。

① 野菜を切る

皮をむかずにそのまま切る

ポイントは皮ごと使うこと。干し野菜のメリットは、一番おいしい皮目を食べられること。野菜は皮付きのまま、しっかりと洗って水気をふき取ってから切りましょう。

好みの大きさに切る

カットした断面が広いほど、水分が抜けやすくなります。水分が抜けて少し縮むので、普段料理をする時よりほんの少し大きめに切ることをオススメします。

【 POINT 】

すべての野菜は、「洗う→水気をふき取る→切る→切り口の水気をふき取る」という手順を踏んでから干しましょう。

② 野菜を干す

通気性の良いざるやカゴなどで干す

通気性の良い竹ざるや干しカゴを使って干します。風で飛んで行ったり、鳥に取られるのを防ぐためには、専用干しカゴがオススメです。

日当たり、風通しがよい場所に干す

干し野菜に向いているのはよく晴れてカラッと湿気のない日。ベランダや日当たりのよい場所に干します。曇りの日や雨の日、湿度が高い時、夜間は避けましょう。

【 POINT 】

まずは数時間から1日間程度を干してみましょう。仕上がり時間は日当たり具合や風通し、野菜の水分量などで変わってきます。おいしいタイミングを見つけてみてください。

③ 完成!

早めに食べ切る

基本的には冷蔵庫で3日から5日ほどもちます。野菜によってはもっともちますが、干したてがおいしいです。野菜の鮮度や水分量、干し具合によって変わるので、できるだけ早く使いきることをオススメします。

【 POINT 】

水分が多く残る野菜は特に早めに使うことを心がけましょう。水分が残ったままだと傷む原因になるので、3日から5日以上使わない場合は冷凍保存を。

廣田さんからの
ワンポイントアドバイス

外に干して、太陽のエネルギーをたくさん浴びた干し野菜を収穫することは、干し野菜生活の楽しみのひとつです。おいしく干せたときは食べるのがとても楽しみになり、料理する喜びまで生まれてきます!

CHAPTER 4
おいしく食べよう♪

干し野菜レシピ

では、作った干し野菜をどんな料理に使えるのか、調理時間が短く、簡単でおいしい干し野菜レシピをご紹介します。

体ポカポカ!
湯きのこ豆腐

材料(2人分)
  • ・半生干しきのこ … 20~30g(生で約100g)
  • ・木綿豆腐 … 1/2丁
  • ・長ねぎ … 5cm
  • ・昆布(8cm角) … 1枚
  • ・塩 … 適量
  • ・卵黄 … 1個分
  • ・ごま油 … 少々
  • ・しょうゆ … 適量
  • ・水 … 200ml
作り方
  1. ① 半日から1日干したきのこを食べやすい大きさに分ける。木綿豆腐は1丁丸ごと使い、真ん中を黄身が入るサイズにくり抜く。長ねぎは薄切りにする。
  2. ② 小さい鍋に、水、1のきのこ、昆布、塩少々を入れて弱火にかける。
  3. ③ 沸騰したら昆布を取り除き、1の豆腐と長ねぎを加える。豆腐のくぼみに卵黄を入れ、卵黄が半熟になるまでふたをして7分ほど煮る。
  4. ④ 火を止め、ごま油、しょうゆを回しかける。
【 POINT 】
きのこのコリコリとした食感とギュッと濃い旨みが豆腐に染みた滋味深い一品。
卵黄と絡めて召し上がれ。

あえるだけ!
ピーマンの塩こんぶ焼きそば

材料(1人分)
  • ・干しピーマン … 2個分(4~8等分)
  • ・エリンギ … 小2本(または大1本)
  • ・中華麺 … 1玉
  • ・塩昆布 … 4~5g
  • ・熱湯 … 40mg
  • ・なたね油(サラダ油でも可) … 小さじ1
  • ・酒 … 小さじ1
  • ・白すりごま … 小さじ1
作り方
  1. ① 干しピーマンは細切り、エリンギは食べやすい大きさに切る。麺は、常温に出しておくか電子レンジで温めてほぐす。
  2. ② フライパンになたね油と麺を入れ、中火にかける。触らずに2分焼いたら、1の野菜と塩昆布を加えて炒める。具に火が通ったら、熱湯を加えてふたをして蒸し焼きにする。
  3. ③ パチパチと音がしてきたら、酒を加えて混ぜ、すりごまをふる。
【 POINT 】
味付けは塩昆布だけのシンプル焼きそば。干しピーマンの味が生きています。

いい歯ごたえ!
ごぼうと鶏の白ワイン煮

材料(1人分)
  • ・干しごぼう(乱切り) … 約1/2本分
  • ・玉ねぎ … 1/4個
  • ・鶏もも肉 … 80g
  • ・トマト … 1/2個
  • ・にんにく … 1/2片
  • ・牛乳 … 大さじ2
  • ・白ワイン … 50cc
  • ・オリーブ油 … 適量
  • ・黒こしょう … 適量
  • ・塩 小さじ1/2
  • A:顆粒コンソメ … 小さじ1/3
  •   水 … 50cc
  •   オレガノ … 適量
作り方
  1. ① 鶏肉とごぼうを同じくらいの大きさにぶつ切りにし、こしょうと塩(分量外)をふる。トマトは適当な大きさの角切り、玉ねぎとにんにくはみじん切りにする。
  2. ② 鍋に油を入れ、温まったら玉ねぎを入れ炒める。
  3. ③ 玉ねぎが透き通ってきたら、にんにくと鶏肉を加え、肉の表面が白っぽくなったら、白ワインを注ぐ。アルコールの香りがなくなったら、ごぼうとAを入れ煮込む。
  4. ④ ごぼうに火が通ったら、黒こしょうと塩で味を調え、トマトと牛乳を入れ数分煮る。
【 POINT 】
干して、香り豊かなごぼうをワインでさっぱり&ほくほくに煮ました。ぜひワインと一緒に…。

廣田さんからの
メッセージ

私たちの体は、食べたものからできています。だから、太陽の光を浴びた野菜を食べることは“太陽の光を食べる”ことだと思います。自分の体が太陽の光できらきらするのかな?と想像すると、干すものを食べるのもわくわくする日々です。野菜を干すことで、みなさんの毎日が“もっと楽しく”“もっとキラキラに”つながれば本望です。そして、少しでも多くの方が笑顔で元気になりますように。

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